先日、ネットでこのような記事を見かけました。
大人や医師の側からしたら当たり前かもしれない治療が子どもにとってはどれだけショックなことか、想像したことはあるでしょうか。ましてやそれが大きな病気や手術だったらなおさらのことです。
この記事ではお子様の手術や治療でのトラウマを防ぐための方法と、それについてできることを書いてみたいと思います。
◇
病院へ行き処置をうけるという流れの中、子どもは病院へ行く前 → 治療中 → 治療後(手術後)とそれぞれの状況でいろいろな気持ちを抱くでしょう。たとえば
・そもそもの不調によるストレス
・「これから何をされるのだろう?」というわからなさ
・治療中に親と離されることの心細さ
・関わっている人たちの無機質な態度(もちろん人によるでしょう。)
・診察台への固定
・全身麻酔の場合などは体が動かなくなっていく、自分のコントロールが効かなくなっていく。などの感覚
・麻酔から目が覚めたあとの痛み、孤独感。
etc
このように痛みや不安がある中で受ける治療は、意識的でも無意識にでも子どもにとってはかなりの恐怖、心細さを感じる状況におかれやすくなります。それを泣いたり甘えたりということで表したり、逆に無表情になる、ということで表すお子さんもいるかもしれません。
一緒に付きそう親の立場としては「熱が高くてどうしよう!」「痛がっているのがかわいそう。」「空いている病院を探さないと。先生にしっかり説明しないと。」など緊張感の中で次々に出てくるご自分の思いなどもあるでしょう。 お子様への気持ちとするべきことの中で板挟みになったりとおつらいかと思います。
そのようなときほど、難しいかもしれませんが、お子さんとご自分のためにも、『今すごく焦っているんだよね。』と自分に気づきながら心の中で自分へ声がけするのも一つでしょう。
◯トラウマになる4つの状況
次にトラウマになりやすい条件をみていきます。
トラウマの定義として『生死に関わるような大きなショックを受けたとき』ともいわれますが、それに限定されたときだけではなく『UDIN』という4つの状態が揃うことでもトラウマ体験となることもあります。
UDINとは
・Unexpected:予期せぬ出来事
・Doramatic:衝撃的だった
・Isolated:独りだった
・No strategy:対処するすべを知らなかった(対処できなかった。)
つまり、突然、ショックの大きなこと、孤独だったこと、それに対して何もできなかったこと。などが重なるとトラウマとなる可能性が大きいのです。
人はいろいろな特質があるので、4つが揃わなくてもトラウマになる場合もあったり、逆に4つの状況であってもトラウマにならない方もいます。(その後のサポートが手厚い、もともとのレジリエンスが高い。など)
手術や医療介入、緊急処置などはUDINが揃いやすく、しかも体の痛みも伴うため、できれば丁寧にケアをしてあげたいところですね。
◯トラウマを防ぐには
ではお子さんが治療による二次的な痛み(医療トラウマ)を受けないようにするにはどうすればいいでしょうか。
簡単にいうと、先ほどの4つの状況を作らないこと。となります。
例えば
・前もって本人がわかるように病気のこと、治療についてを絵やおもちゃなどを使って説明する。
(詳しくなりすぎない程度に。)
・痛い処置があるときに「痛くない。」と言わない。説明してあげる。(現場でびっくりさせない。)
・医師やスタッフの方々とコミュニケーションを取るようにする。
・医師や看護師に事前に説明の機会を設けてもらう。(記事にあったプリパレーション。)
・治療器具や薬を見せる。説明をする。
・薬(や麻酔)を飲むと、どういう感じになるのか。と、体の感覚を先に教えてあげる。
(じわーん、という感覚や動きにくくなる感じ。そうなるのは変なことじゃない。ということ。大丈夫だし、一時的なことだよ。などの説明。)
・できれば治療中は一緒にいる。(医師や病院に話をして。)
・治療の前後は特に十分に触れ合う。
・ゆっくりとした時間を持つ。
・痛かったこと、怖かったことをがまんさせない。話したりする時間をもつ。
・痛みを感じているときには、痛みがない部分にも目を向ける。
・一緒にいる大人(親など)が落ち着いた態度で一緒にいる。
・治療後、手術後はゆっくり休む。
など。
病院のシステムやご家庭の事情などで、できることと難しいことがあるかと思います。
その中で、できることをします。
まずは何よりケアする側がゆっくりと落ち着きをもった態度でいること。自分の状態に気がついていることでしょう。そして、「いいんだよ。大丈夫だよ。」や終わったあとは「よくがんばったね。もう終わったよ。大丈夫だよ。」という言葉がけや優しいタッチ、ハグなど、ゆっくりとした触れ合いを持ちます。
治療自体は病気やケガを治すことが優先となるかもしれません。それでも、その最中の体験によって、その後の回復に影響があるとしたらどうでしょうか?
このような医療時のトラウマについて知ることで、できることや防げることがあります。知ることで必要以上の傷を避けたり、スムーズな回復となるであればぜひ、そうしたいですよね。
そのためにも、大人側、医療に従事されている方々にもこういう認識が広がるといいなと思います。広がっている、とも思います^^
緊急時ほどそばにいる大人や親も緊張や焦りがでるかと思います。長期に渡る治療ほど、ご本人も親御様もストレスがかかるかと思います。
そんなときこそ、
愛本来の思いがあること。優しくて安全なつながりももてること。「大丈夫」は今ここから、いつでも作れること。そして作り直せることを思い出してください。
◯落ち着きを取り戻す方法
即効性があり、今まで自分で使ったり、セッションのときに用いてよかったものをご紹介します。
・まず今の自分の様子に気が付く。(気がつかないと落ち着く行動ができない!)
・深呼吸。まずは、吐く。
・鎖骨の下や手首の内側をタッピング(指先で軽くトントンする。)※お子さまへのタッピングもおすすめです!
・ゆっくり動く、ゆっくり話す。
・心臓に優しく触れる。
ほかにも日頃からご自身やお子さまの『すき・安心』と感じられるおもちゃや毛布などを用意しておくのもいいでしょう。
また、なにかお子様のことで気になることがある、その思いが続く。というようなときには専門家のところへ行くのも一つです。お子様のセラピーをされたり、もしくは「不安が続いている自分」がセラピーを受けたり。信頼のおけるセラピストやカウンセラーとの時間は回復の助けとなります。どうぞ一人で無理をなさらないでくださいね。
◇
いかがでしたでしょうか。簡単ではありますが、医療時に起こり得るトラウマとその予防について書いてみました。
トラウマ体験はできれば起こらないでほしいですが、もし、起きたときにはできることもあるということ。そして人には本来、生命がもっているすばらしい回復力があるということをお伝えしたいと思います。
そのすばらしい力があなたや大切なお子様の中でじゅうぶんに発揮されますよう。
◯最後に。~すべての方へ~
ここでは「子どもの医療トラウマを防ぐ」と書きましたが、医療介入でうけるトラウマはお子様に限らずどの年齢の方にも当てはまることです。医療技術の進歩は目覚ましいものがあり、携わっておられる医療従事者の方々も熱意をもってすばらしい対応もされています。
それでも、身体で感じる恐怖やショックは感じるのも自然なものです。治療を受けられるご本人であっても、ケアされるご家族であっても、どうぞ今あるお気持ちとともに最適な治療となりますよう。
もし、これからご家族で手術や長期の治療にあたられる方がいらっしゃるときにはこの記事が何かのお役に立てましたら幸いです。
◯セッションへのお問合せ・お申込みは
こちらからお願いいたします。>>